コラム孫右ヱ門

今年も一年ありがとうございました。


2015年12月29日

師走は本当に字のごとく、慌ただしく駆けていきますね。
早いもので、年末のご挨拶をさせていただく時期となりました。

孫右ヱ門に関わる多くの方々に支えて頂き、今年も無事に終えることができました。
感謝の気持ちでいっぱいです。

「美味しく美しい最高級の抹茶をつくり、それを一人でも多くの方に伝える」

これを常に思いながら、一緒に歩んでくれる仲間とともに、来年もまた日々茶に向き合っていきます。

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今年も一年ありがとうございました。
皆様には、これからも変わらぬご交誼賜りますようお願い申し上げます。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA(孫右ヱ門スタッフ一同)

年始のコラムは第3週の更新となります。
引き続き宜しくお願いします。

ひとびとvo.5 陶芸家 清水志郎さん


2015年12月1日

陶芸家:清水志郎さん

<略歴>
京都五条坂に陶器屋三代目として生まれる。
陶芸家である祖父・清水卯一と、父・清水保孝のもとで育ち、自然と陶芸の道に進む。
祖父卯一、父保孝に師事し、2013年松ヶ崎に独立。
土にこだわり、京都で自ら土を掘り、自作の炭窯で焼き物に仕上げる。
焼物とは何かを知るために、現在も日々追求し続けている。
清水家HP http://www.shimizuke.net
OLYMPUS DIGITAL CAMERA孫右ヱ門との出会いは、京都にあるギャラリーYDS。
清水志郎さんの器を用いた食事会に孫右ヱ門が参加したことがきっかけでした。
孫右ヱ門は、そこで出会った清水さんの作品に惚れ込み、秋に行った孫右ヱ門オリジナルの口切りの儀には、清水さんの作品である茶碗を使わせていただきました。

今回は、孫右ヱ門が魅了された清水志郎さんの作品づくり、また清水さんご自身について、いろいろお話を伺いました。

編集担当:清水さんは、自ら掘った土を使って作品作りをされていますが、何か文献を頼りに
     土選びをされているのでしょうか?

清水志郎さん(以下「清水さん」):
     いいえ、最初は、行き当たりばったりでした。
     あ、今ここで工事してるから頼んで土もらってみようか…とか。
     「土出てませんか?」「どんな土や?」「陶芸に使うんですけど」
     「そんなん知らんわ、自分でみてくれ」みたいな。

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     その後、色々な情報を聞いたり、文献を調べて探すようになりました。
     鴨川の近くはヘドロが多いから使われへんなとか、
     東山連峰には清水焼、泉涌寺焼、日吉焼、八坂焼…等々、色々焼物がある。
     焼物があるってことは土があるよねと思って。
     じゃあ東大路、白川通りは狙い目だな、とか分かるようになりました。

編集担当:特に京都の土へのこだわりはありますか?

清水さん:いいえ、どこの土が良いとかはなくて、京都に限らずどこの土でも作ってみたいです。
     あえて言うなら、地元の土、近所の土にこだわってるのかなぁ。
     生まれ育った京都馬町の土は、僕にとってすごくリアルで面白いです。

     京都ブランドは有利ではあるんですけど、京都の土というだけでチヤホヤされてしまったら、
     自分の実力を勘違いしちゃうじゃないですか。そこで勝負はしたくないなぁと思います。
 
     あと、僕は人間国宝、清水卯一の孫ということで、有難いことの方が多いんですけど、
     清水志郎として見てもらえなくて、寂しい思いをしたこともあるので、
     冠だけで見るようなことは自分はしたくないなと思います。
     まぁ、したくないと思っている時点でしてしまってるんですけど。

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編集担当:焼物の土は使いやすいように混ぜて使うのが一般的だと思うのですが、清水さんは土を混ぜずに
     単味(単体)で使ってらっしゃいますよね?なぜ単味にこだわって土を使われるのでしょうか?

清水さん:作りやすい土で作っていると、上手くなったような気になってしまうし、
     それでは自分がダメになると思うんです。
     確かに単味には形の限界があります。

     今みたいに土の作業をしている時に、この土で何ができるかを考えるんです。
     きめ細かいから急須に向いてるかな?これはもう板皿にしかならんわとか。
     そう考えていると面白くて、僕はこの作り方をベースにしています。

     こうして自分に負荷をかける方が、必死で向き合うし本気になる。
     失敗も多いけど、できる限り粘りたいですね。

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この日、清水さんが使っていたのは五条坂の土。
手作業で土の中の石を取っています。
機械で精製するときれいに均一になりますが、それでは土の特徴が薄れてしまうと清水さんは言います。
砂利の方が多くて、手作業でも取り除けないこともあるけど、それはそれで面白い味が出るのだとか。

編集担当:次は清水さんの「人となり」についてお尋ねします。
     どこかの個展でのプロフィールに、「2009年、書道をはじめる/2011年、気功整体を学ぶ」とあった
     のですが、書道や気功整体は、清水さんの作品づくりに影響を与えているのでしょうか?

清水さん:書道や気功整体では、先生の影響も受けていますし、それに限らず、
     その時その時出会った人の影響って少なからず受けるものだと思います。

     気功整体は母の病気をきっかけに習い始めました。
     気功整体を練習する中で分かったことですけど、「治してやろう、治してやろう」と思った瞬間に
     全く効かなくなるんですね。
     でも相手を感じようとした瞬間に効いていく。
     そういう東洋的なところが、器づくりに通じているなと思いました。

     西洋の美術や現代アートは、いかに自己表現するかですけど、日本の美術や工芸は、
     いかに自分というものを後ろへ持って行くというか、相手を優先することにあります。

     例えば、器ならどんな料理を盛ると綺麗だろうかを優先すると、自然と自分というものが薄まって、
     美しい内側の見込みが出てきます。
     主張のあるものより、そういう日本的なものの方が、使っていても心地良いいなと思います。

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編集担当:清水さんにはお茶摘みツアー、口切りの儀など孫右ヱ門のイベントにも
     参加していただきましたね。孫右ヱ門の抹茶を飲まれた感想は?

清水さん:口切りの儀でいただいたお濃茶は美味しいなぁと思いましたね。
     今度は点てずに飲んでみたいです。
     泡を点てると美味しくなっちゃうじゃないですか(笑)だからそのままの味を試してみたい。

編集担当:すごく清水さんらしい感想ですね(笑)

編集担当:最後に清水さんのこれからについて教えてください。今後何かやってみたいことはありますか?
     個人的なことでも結構です。

清水さん:「一日一花生け」
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     昨日から始めたんですけど、一日一花を毎日生けること。
     先日、清水家主催のお茶会をしまして、その時に花を生けたんですけど、土壇場で当日、無理矢理
     山へ散歩に行って花を採ってきたんですね。
     そんな付け焼き刃なものじゃなくて、日常の中で花を生けることを習慣にした上で、茶会の時に、
     自然に生けられるようにしたいと思っています。

     あとは、「普通のことを普通にちゃんとできるようになりたい」ということでしょうか。
     僕の尊敬する備前の焼物の先生が、「直球で勝負できるように、いつでも直球を磨いておきなさい」
     とおっしゃられたんです。
     刺激の多い世の中で、変わったものが求められているけど、スタンダードの直球で勝負しようとしな
     いと生き残れないと思います。

     昔からあるものを勉強したり、本物を見て、本物に挑みたいです。50年後を目指して。
     50年後には、また20年後目指してとか言ってると思いますけど(笑)

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   あとは窯を作りたいです。今、庭にあるのは7号機。もう少し大きいものが入る8号機を作りたいです。
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清水さんの自宅兼工房の庭にあるのは自作の炭窯。
住宅地の中で、できる限り煙を出さないよう、炭窯を自作したのだとか。

今回、清水さんのご自宅でもある、松ヶ崎の工房にお邪魔しました。
掃除の行き届いた仕事場、目に見えないけれど、昔ながらの竹駒いの上に土壁を塗り、陶芸の白土を塗り重ねた壁など、住まいの至る所に、清水さんの本質を追求する心が宿っていました。

孫右ヱ門も惚れ込んだ清水さんの作品はとても魅力的です。
清水さんの日々の暮らし方、心のあり方、そのどれを取っても本質を目指すという一つのところへ行き着きます。
その果てしない探究心に頭が下がる思いでした。

来週よりギャラリーYDSにて、「Re:planter × 清水志郎 二人展 ~去~」が行なわれます。
ぜひ、清水さんの作品をご覧に、足をお運びください。

◆ 開 催 期 間 :2015年12月6日(日)~12月12日(土)
◆ 時   間  :11:00~19:00
◆ 場  所   :ショップ&ギャラリー YDS
◆ オープニングパーティー : 6日 PM 7 : 00~ 参加費2,000円
※VOLVER 宍倉 慈 さんによるビュッフェスタイルのお料理でのおもてなし。