コラム孫右ヱ門

月別: 2016年7月

お茶にまつわるモノ・コト・道具vol.11 合組(ごうぐみ)


2016年7月24日

前回のコラムでは、お茶には様々な品種があることをお話ししました。
皆さんが市場で手にする抹茶の全てが合組(ブレンド)された抹茶で、単一の品種、単一の生産者からできた抹茶というのはなかなか手に入らないというお話もしましたね。
今回は、そのお茶のブレンド、「合組」について、碾茶の場合をお話したいと思います。
合組topお茶は一本物(単品)で、色、香り、味の三拍子が揃ったものはほとんどありません。
あるにはあるのですが、三拍子揃ったお茶は非常に高価になります。
例えば、弊社の「ほんず抹茶」は昔ながらのほんず製法で栽培した「あさひ」という品種の一本物で、価格は20gで¥16,200(税込)になります。
色も、味も、香りも三拍子揃っているとなると、どうしてもこのような価格になってしまいます。
OLYMPUS DIGITAL CAMERAまたお茶は農産物ですから、毎年全く同じものが仕上がる訳ではありません。
荒茶(製品に仕立てる前の段階の茶)は、産地や品種、蒸し具合によって毎年様々な個性を見せてくれます。
茶師はその荒茶の特性をひとつひとつ、五感と経験を活かして敏感に感じ取り見極めていきます。
そして、それぞれの荒茶が持つ長所をより引き立たせるようにブレンドするのが、「合組」と呼ばれる製茶業界になくてはならない技術なのです。

①味は濃いが挽き色が今ひとつの茶
②色は冴えるが味と香りが今ひとつの茶
③香りは良いがコクと色がいまひとつの茶

これらを組み合わせ、味、色、香りの三拍子揃ったお茶をつくるのが合組の基本、三ツ合です。
これがうまくいくと、1+1+1が4にも5にも6にもなるのです。
20160707-tencha10「味」の碾茶は、「ごこう」や「さみどり」が好まれる傾向にあります。
産地によっても違いはありますが、新茶時期でも濃厚な旨味があるのが特長です。

「色」の碾茶は「浜茶」です。
弊社のように木津川の河川敷周辺で栽培されている碾茶を「浜茶」といい、「色」の碾茶として茶問屋から重宝されています。
浜茶は非常に冴えのある緑色をしているのが特長です。
また砂質土でできた碾茶は新茶の時期であっても味が非常にまろやかなのも特長です。

「香り」の碾茶は、宇治の山手のものがよく好まれます。
石臼で挽くとすごく良い香りがするのですが、挽き色が白っぽく鮮やかさに欠けるのが特長です。
また新茶の時期は味の「せい」がきつく、年を越すまでは味がまろやかになりません。
ですから、茶問屋さんでは年明けまでは、宇治の山手の茶は新茶を使わず、古茶(ひねちゃ)を使うのが一般的だそうです。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA茶師はそれぞれの特徴を見い出し、長所を活かすことによって、一本物(単品)にはない味や香りを引き出します。
万一、見極めに失敗して性悪茶を入れてしまったら、バランスを取るためにその10倍もの茶を犠牲にしなければならない場合もあります。
またせっかく合組によって三拍子揃った茶が仕上がっても、茶問屋さんでは商売上、価格が見合わないことがあります。
そんな場合は、「落し」と呼ばれる碾茶が使われます。
単品ではこれといった特徴のない安価な碾茶が「落し」です。
この「落し」を使って販売価格の調整をするのですが、良い「落し」を見分けるのもかなり難しい仕事のようです。

それぞれの荒茶の特長を見極め、長所をいかに引き出すかは各茶問屋の茶師の腕の見せ所であり、門外不出の企業秘密なのです。
20160723-IMG_0134弊社の抹茶「蒼穹」は、弊社の茶園で栽培された碾茶のみを合組(ブレンド)しています。
弊社の茶園では、あさひ、さみどり、こまかげ、やぶきた、ごこうという5品種の碾茶を栽培していますが、「蒼穹」は孫右ヱ門の経験により、5月の初旬から下旬の中で、新芽のコンディションが良いものだけを厳選し、合組(ブレンド)しています。
近頃の抹茶の傾向としては、香ばしい香りが強いものが多いのですが、弊社の抹茶「蒼穹」は昔ながらの、「味」に重きを置いた抹茶です。
4cdff42b8eef448e4457_460x460浜茶ですから冴えのある色はもちろん、旨味とまろやかな味が引き立つような合組を行っています。
単一生産者からなる抹茶は珍しいものですので、弊社の抹茶「蒼穹」をぜひ味わってみてください。
https://magouemon.stores.jp

お茶にまつわるモノ・コト・道具vol.10 お茶の品種


2016年7月8日

茶農家が一年で一番忙しい茶摘み、製茶の季節が終わりました。
茶摘みを終えた茶畑は、ついこの間までの摘み子さんの賑やかな声が嘘のように静まり返り、時折、風が竹藪をさわさわと揺らす音だけが響いています。
茶摘みを終えると、茶木は膝丈に番刈りされて枝だけになり、茶園は殺風景な姿に変わります。
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20160529-IMG_5702梅雨の雨と夏の日差しを受けて、今また新たな芽を出して茶園を緑色に染めています。
OLYMPUS DIGITAL CAMERAみなさま大変お待たせしました。
今月よりコラム孫右ヱ門を再開いたします。

今回はお茶の品種のお話です。

お茶は、1217年に明恵上人が栄西禅師より茶の種を譲り受け、京都の栂尾や宇治にその種子を蒔いて以来、昭和初期まで、ずっと種を蒔いて繁殖させてきました。
しかし茶の樹は他殖性(自分では受粉しにくい)植物なので、できた種は遺伝的に雑種となってしまいます。
20151030-IMG_3668ですから同じ茶園でも、株ごとに品質の良し悪し、収量の多い少ない、芽の出る時期の早い遅いが揃わず、品質を安定させることが非常に難しかったのです。

そこで、昭和初期になると研究機関や熱心な茶生産者によって、こうした在来種の中から優れた特性を持つ茶の樹を選抜して育成する試みが始まりました。
そうして選抜された優良品種は取り木や挿し木によって繁殖、育成されて、品質や収量の安定した品種茶の栽培が主流となっていったのです。
現在では、種から育てられた在来種、つまり雑種のお茶はたった3%となり、97%が品種のお茶と言われています。
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お米に「こしひかり」「あきたこまち」など品種があるように、お茶にも様々な品種があります。
「やぶきた」「あさひ」「こまかげ」「さみどり」「宇治みどり」など、碾茶、玉露、煎茶それぞれに適した品種が選抜され育成されてきました。
現在では農林水産省に品種登録されているものだけでも66種類もの品種があります。
そのうち幾つかをご紹介したいと思います。

「やぶきた」は日本で一番多く栽培されている煎茶向きの品種で、栽培面積の75%を「やぶきた」が占めています。
明治末期から大正にかけて、静岡の杉山彦三郎氏によって選抜されました。
孟宗竹(もうそうちく)の藪を起こして種子を植えた中から選抜した品種で、藪の北側で取れたから「やぶきた」となったそうです。

「あさひ」は宇治の平野甚之丞氏によって選抜された品種です。
新芽が薄くて軟らかいのが特徴で、新芽の香りも抜群に良いので、碾茶の中では一番高値で取引される品種でもあります。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA孫右ヱ門の茶園でもこの「あさひ」を栽培していますが、毎年全国茶品評会へはこの「あさひ」を出品しています。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA「あさひ」の名前の由来は本居宣長の「敷島の 大和心を人問はば 朝日に匂ふ山桜花」という歌から発想されたものだそうで、日本人の心を最も端的に表現した「あさひ」という言葉をこの茶の名にしたそうです。
現在宇治市植物公園には、宇治の宝木としてこの「あさひ」の原木が植えられています。
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「さみどり」は直立性で摘みやすいので、手摘みの碾茶では最も栽培面積が広く、生産量の多い品種です。
20150514-IMG_4782宇治の茶商、山政小山園三代目、小山政次郎氏によって選抜されました。
葉の色がとても明るい緑色なのが特徴です。
抹茶戦前にアメリカで博覧会が催された際、小山氏がこの「さみどり」を缶に詰めて出品しましたが、残念ながら買い手がつかず、太平洋を往復して返品されてしまいました。
その品を低温貯蔵して、10年を経過した戦後のある日、その缶を開けてみると、まったく品質が変わらず鮮やかな緑色をしていたという話が残っています。

「ごこう」は玉露向きで、大変うま味が強く、香りに特徴がある品種です。

孫右ヱ門の茶園では、「あさひ」「こまかげ」「さみどり」「ごこう」「やぶきた」といった5品種を栽培していますが、それぞれに個性が異なります。

一般的には、この品種茶を単体で味わうことはできません。
農家は摘んで荒茶に仕立てた品種茶を茶問屋に卸します。
茶問屋の茶師は、様々な農家から買いとった特徴の異なる数種類の茶葉をブレンドして、色、味、香りを整えて抹茶の製品にし、市場へ出します。
このブレンドする作業を合組(ごうぐみ)と言い、その配合は、その茶問屋独自のもので門外不出なのです。
皆さんが市場で手にする抹茶はその全てが合組(ブレンド)された抹茶で、単一の品種、単一の生産者からできた抹茶というのは手に入らないのです。
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今回、孫右ヱ門では、皆さんに品種を単体で味わっていただける茶農家ならではのイベントを企画しました。
宇治産の「さみどり」、城陽産の「さみどり」、「やぶきた」、「ごこう」4種類の品種をそれぞれ単体で味わっていただきます。
その味や香りの違いを五感で感じ、ご自身のお好みでブレンドし、世界にひとつのマイブレンド抹茶をつくって頂こうという企画です。
品種茶を単体で味わえる機会は滅多にありません。
ぜひこの機会にご参加下さい。
合組タイポ「世界でひとつのマイブレンド抹茶をつくる会 茶師の技 合組体験」
■日時:7月30日(土) PM13:30~15:30
■会場:株式会社 孫右ヱ門 京都府城陽市南垣内20-1
■集合場所と時間:
13:15 近鉄「富野荘」駅 二番出口(西側)http://goo.gl/6ZHQGT
(会場に駐車場はございません。また近鉄富野荘駅周辺にはパーキングがございませんので、お車でお越しの場合は、近鉄寺田駅もしくは近鉄新田辺駅周辺のパーキングに駐車の上、ひと駅電車に乗って富野荘駅で下車してください。)
富野荘駅から会場までは車で送迎いたします。ピストン送迎になりますので、人数によっては少々お待ちいただきますので、ご了承ください。
■定員:12名
■参加費:8,640円(税込)
■お申込、お問合せ:
株式会社 孫右ヱ門 0774-52-3232 , info@magouemon.com
※お電話でのお問合せは平日9:00~18:00の間でお願いします。

※Facebookアカウントをお持ちの方は、孫右ヱ門Facebookのイベントページ(https://www.facebook.com/events/623201597844067/)よりご参加ください。

■主催:株式会社 孫右ヱ門 http://www.magouemon.com/

次回のコラムは、先ほど触れた茶師によるお茶のブレンド、合組(ごうぐみ)についてのお話です。