コラム孫右ヱ門

冬の茶園


2018年12月19日

今年も残すところあと半月を切りました。
12月は暖かい日が続いていると思えば、雪が降りそうなほど寒い日もありましたね。
畑仕事をしておりますと、このところの気候変動を肌身で感じます。

12月の今頃になると、秋にふんだんに撒いた有機肥料で土がふかふかになってきます。
そして、肥料の栄養を十分に吸い取ったお茶の葉は艶やかに輝きます。

もし、冬の茶園を見る機会があれば、お茶の葉をじっくりご覧になってください。
お茶の葉がテカテカと艶やかに輝いていれば、その茶園ではたくさん良質の肥料を与えていること、
お茶の樹が肥料の栄養を十分に吸っていること、茶樹が元気であることのバロメーターになります。
そして、初夏の茶摘みの後、番刈りと言って膝丈くらいに刈りそろえたお茶の木はというと、夏や秋を超えてこんなにも大きくなっています。
茶園の場所によってばらつきはありますが、だいたい平均的な身長の女性の胸のあたりまで伸びています。
茶園によっては背を越す勢いのものもあります。

現在、茶園では、「新芽切り」の作業をしています。
高く伸びた茶樹から出た新芽を手作業でカットしていきます。
冬にお茶の新芽を切るのは、茶樹の高さをだいたい揃えて、来年の初夏に出てくる新芽の大きさを揃えるためです。
新芽の大きさが不揃いになると、摘んだ葉を均一に蒸すのが難しくなります。
また、お茶摘みさんはほとんどが女性ですから、あまり大きくなってしまうと、背伸びして摘まなくてはならなくなります。

冬の畑チームは、雪だるまのように着込んで作業をしています。
特に午前中、朝露に濡れた葉は冷たく、手袋をしていても指先の感覚がだんだんなくなっていきます。

全ては来年のお茶のために、こうして冬の間も手間暇かけて大切に育てています。

こうして大切に育てた孫右ヱ門のお茶を、大切な方への贈り物や、お正月の特別なお抹茶にいかがでしょうか?

孫右ヱ門の抹茶は、以下のサイトでご購入いただけます。
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秋の茶園に芋のツル?!


2018年9月19日

連日のように降っていた雨も小休止。
今日は爽やかな秋晴れの1日となりました。
茶園のある木津川の堤防では、山ツバメが飛び交っています。
草むらの虫をたくさん食べて栄養を蓄え、渡りに備えているのでしょうか?
9月も中旬を過ぎ、暑さも和らいで、ようやく日中も茶畑での作業ができるようになってきました。
秋の茶畑はこんな感じです。
初夏の茶摘みの後は、番刈りと言って、膝くらいの高さまで茶樹を切り揃えますが、
9月に入り少し風が冷たくなってくると、親葉が盛り上がるように勢いを増し、秋芽が立ち始めます。

そしてこの時期の茶畑をよく見ると、お茶の葉の間にハート形の葉を付けた「つる」をあちらこちらに見つけることができます。
これは山芋のつるなのです。
これがまた厄介もので、芋のつるはお茶の木の枝に絡みついてぐんぐん伸びます。
それを一つ一つ手作業で枝から外して取っていきます。

つる取りは簡単なように見えるのですが、実はなかなか技が要るのです。
特に厄介なのはこの「むかご」。
むかごは山芋の赤ちゃん。
これが地面に落ちると、そこからまた無数にツルを伸ばして増えていきます。
つるを引っ張って抜こうとすると、むかごがポロポロ外れて地面に落ちてしまいます。

そうっと枝からつるを外して、土を少し掘り、そっと引き抜きます。
上手くいくと種芋ごとすっぽり抜けて、絶やすことができます。
種芋ごと抜けた時は、ちょっぴり快感!
なかなかやみつきになる作業です。

お茶摘み体験に来ていただいた方はお分かりになるかと思いますが、
5月の茶摘みの時には、このような芋のつるを見かけませんよね?
それは、こうして秋の間、手作業でひとつひとつ「つる取り」をしているからこそ、なのです。
全ては次の年のお茶の品質のために。

これから茶の木は、冬に向けて枝を太らせていく時期に入っていきます。
茶園からのまたの便りをお楽しみに。

残暑お見舞い申し上げます


2018年8月13日

残暑お見舞い申し上げます。
今年は酷暑と言われる猛烈な暑さが連日のように続いていますが、皆さま体調崩されていませんでしょうか?
真夏の茶園はとにかく草引きです。
ぐんぐん伸びる夏の雑草との戦いです。
しかし、今年は例年にない暑さのため、草引き以外の暑さ対策で追われています。

お茶の葉は気温が37度を超えると、葉焼けを起こして茶色くなってしまうことがあります。
そのために、寒冷紗と呼ばれる黒い布で茶園を覆い、日除けをします。
寒冷紗は、てん茶特有の旨みや香りを引き出すためだけでなく、日除けや防霜の役割も果たしてくれます。
これだけ暑いと水やりの水も相当でしょう?と聞かれることがありますが、
基本的にお茶の木には水やりはしません。
お茶はとても生命力の強い植物です。
水を与えなければ、水を得ようと根を深く遠くまで伸ばします。
そうすることで、茶樹の持つ生命力、成長のポテンシャルを最大限に引き出してあげるのです。

しかし、今年は例年にない酷暑。
京都では38.9度を記録する日もあり、37度超えの日々が続きました。
そこで、水主神社の領内にある幼木園では、今年異例の水やりを行いました。

寒冷紗の広げられる茶棚のある茶園は良いのですが、まだ茶棚を立てていない幼木園の茶樹がところどころ葉焼けを起こしてしまっているのです。
まだ幼いお茶の木は、まだ根も浅く、この連日の暑さに耐えきれません。
水やりでなんとかこの夏を乗り切って欲しいものです。
お盆で帰省や旅行にお出かけなさっている方もいらっしゃると思いますが、皆様もしっかりと水分補給なさって、くれぐれも熱中症にはご注意くださいね。

今年の製茶が終わりを迎えました


2018年6月21日

4月27日、今年は例年より随分早くスタートしたお茶摘みでしたが、
昨日で約1ヶ月半続いたお茶の繁忙期もようやく終わりを迎えました。
お茶摘みは6月上旬までの約1ヶ月と少しで終わるのですが、そのあとも、関西や全国の茶品評会に出品するためのお茶の選別作業「お茶選り(おちゃより)」が続くのです。
編集担当もこのお茶選り作業に入って、約一ヶ月半、拝見盆の中の茶葉と向き合ってきました。
抹茶の原料となる碾茶の品評会では、お茶の外観・香気・滋味・水色・から色(茶殼の色)の5項目が審査されます。

お茶の良し悪しは、製造の適否や品質が外観に出ることから、まず外観(色や形状)から審査を行います。
外観は40点満点で、まずここで満点クリアしないと一等の農林水産大臣賞にはもう届きません。
それほどお茶の外観は大事な要素なのです。
だから多大な人件費がかかったとしても、お茶の一枚一枚を丁寧に手作業で選別するのです。
今年も外観は、孫右ヱ門満足の冴えた鮮やかなグリーンに仕上がりました。
今年は味も香りものっている。
さて、結果はいかに。

全国茶品評会の結果発表は8月の下旬です。
今年こそ、1等がとれますように。

期間中は国内外からお茶摘み体験ツアーにご参加いただきありがとうございました。
また、雨でやむなくお茶摘み体験ツアーに参加できなかった皆様、大変申し訳ございませんでした。
また来年もお茶摘み体験ツアーを企画いたしますので、ぜひお越しください。

「茶農家さんはお茶摘み以外のシーズン何をしているの?」
お茶摘み体験ツアーでよく聞いていただく質問です。

そんなお茶摘みシーズン以外、茶農家は一体何をしているのか?
こちらのコラムでその様子を発信していきますので、ぜひ茶園からの便りをご覧ください。

茶園だより 「春分の日」


2017年3月20日

編集担当の都合により長らくお休みをさせていただいておりましたコラムですが、
また再び京都山城の地より、茶園のこと、お茶の効能、お茶にまつわる様々なことを、茶どころより皆様の元にお届けいたします。

コラム復活第1回目は孫右ヱ門の「茶園だより」です。

春分の日の今日は、茶園から春をお知らせします。

孫右ヱ門の茶園の一つに、私たちが昔から「上の浜(かみのはま)」と呼んでいる茶園があります。
木津川沿いにある私どもの茶園は砂質土なので、この辺りを「浜」と言い、茶園の中で一番上流にあるので「上の浜」と呼んでいます。
「上の浜」の近くにはお墓があり、お彼岸のお墓詣りで賑わっていました。

今日はとても良いお天気で、茶園に降り立つと、茶葉が陽を反射してキラキラと眩しいほど。
 そんな中、茶葉の一枚一枚に目を向けると、冬を越した硬葉(こわば)の付け根あたりに、何やら黄緑色のふっくらしたものが。
ここ数日のあたたかさで、新芽がニョキニョキと小さな顔を出してきました。
この新芽を目にすると、春がやって来たのだと感じます。
茶摘みの季節まであと1ヶ月半ほど。
ここから、茶農家が最も気を配るシーズンに突入します。
今年も美味しいお茶を皆様にお届けできるよう、心を込めて育てます。

孫右ヱ門では、茶園や製茶工場を見学できるMagouemon Tourを行なっています。
http://www.magouemon.com/tour/
製茶工場が稼働しているのは5月の茶摘みシーズンのみですが、
それ以外のシーズンも施肥、茶棚立て、よしず編み、簀上げ(すあげ)等、四季を通して様々な作業を見学していただけます。
茶葉から鮮やかな緑の粉末になるまで、抹茶の成り立ちを肌身で感じることのできるツアーですので、
お茶好きな方、ぜひ孫右ヱ門の茶園へ足をお運び下さい。
英語での案内も対応可能です。
まずはお問い合わせください。

茶園の四季vol.2 「すあげ」と「わら振り」


2016年4月8日

孫右ヱ門の茶園がある木津川には桜づつみと呼ばれる美しい桜並木が続いています。
20150330-IMG_3570桜が満開を迎えた先週のこと、孫右ヱ門の茶園では、茶棚に葦簀(よしず)を広げる「すあげ」の作業を行いました。
冬の間に補修しておいた葦簀(よしず)を、茶棚の上に上げて広げていきます。
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20150324-IMG_3069この状態で遮光率は55~60%になります。
少し薄暗い日陰にいるような感じです。

「よしず下10日 わら下10日」と言われ、「すあげ」作業の約10日後に、広げた葦簀(よしず)の上に藁を振る「わら振り」という作業を行います。
茶棚のパイプの上に足をかけ、広げたよしずの上に手にした藁を振り落としていくという大変難しい作業です。
20150418-IMG_3897これで遮光率は95~98%になります。
覆下にいると随分暗いと感じます。
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こうして遮光をすることにより、茶の旨み成分であるテアニンが渋み成分であるカテキンに変化するのを抑えることができます。
それだけでなく、日光を遮ることで茶葉がより柔らかく、色も鮮やかな緑色になります。
そして、「覆い香(おおいか)」と呼ばれる独特の香りが生まれるのです。

しかし、そもそもどうして茶園を葦簀(よしず)や藁で覆うようになったのでしょうか?

鎌倉時代、中国の禅僧栄西が、現在の京都市右京区栂尾(とがのお)にある高山寺の僧明恵(みょうえ)上人に茶の種子を贈ったのは有名なお話ですね。
明恵上人はその種を栂尾に播いて茶を育て、修行のための眠気覚しとして周りの僧侶たちに勧めたと言われています。
栂尾は山間の地形で日照時間の短い場所であり、そこで育った日陰のお茶が良質だとされ「天下一の茶」ともてはやされました。

しかし南北朝時代には「宇治茶」が台頭するようになります。
栂尾茶に代わって、宇治茶が茶人の賞賛を得るようになったのは、気候の適否や生産量の多寡などの理由の他に、宇治茶師の努力と工夫に依るところが大きかったようです。

その創意工夫の一つが、どうやら茶園を葦簀(よしず)や藁で覆う覆下栽培だったようです。

茶園にたまたま筵(むしろ)が乗っており、その部分だけが霜が当たらず、良い新芽が出てきたという説もありますが、詳しいことは未だ定かではありません。

しかし、霜除けを目的として葦(よし)や筵(むしろ)を被せたことが始まりだということは確かです。
やがて日陰育ちの茶が良いと気づき、以後長年、茶師たちによる改良・工夫が重ねられた末に、霜害を防ぎ、強風から茶の新芽を守り、遮光率を人為的にコントロールできるという利点を持った現在の覆下栽培の形が出来上がっていったのではないでしょうか。

さて、来週辺りには、わら振りの作業が始まります。
わら振りが終わると、いよいよ一年で最も茶園が賑やかになる茶摘みの季節が始まります。

孫右ヱ門では、今年もお茶摘み体験ツアーを行います。
20150514-IMG_4789のコピー新茶の手摘み体験、製茶工場見学、挽き茶体験、摘んだばかりの新芽の天ぷらと旬菜の松花堂弁当、抹茶の点て方ワークショップなど盛りだくさんな内容でお届けします。

日時:5月15日(日)9:15(近鉄富野荘駅2番出口)集合 14:00 解散予定
詳しくは下記、孫右ヱ門Facebookページをご覧ください。
https://www.facebook.com/events/1584753485175570/

その他、松花堂弁当はつきませんが、お茶摘み体験、製茶工場見学、碾茶体験のみのツアーも別日程で予定しております。

詳細は孫右ヱ門Facebookページにて随時お知らせします。

希少な碾茶の手摘み体験、そして摘みたての新茶を味わえるのもこの季節だけの贅沢です。
ぜひ皆様のご参加をお待ちしております。

お問合せ:株式会社 孫右ヱ門 TEL:0774-52-3232  MAIL: info@magouemon.com 
     ※お電話でのお問合せは平日9:00~18:00の間でお願いします。

茶園の四季vol.1 お茶の花


2015年11月6日

今回は「茶園の四季」
秋の茶園の様子をご紹介します。

「お茶の花」をご存知ですか?
お茶の花と言っても、お茶席に飾る花のことではありません。
茶の樹に咲く花のことです。

茶園というと、青々とした葉っぱが広がる様子を思い浮かべますが、秋の茶園をよくよく見てみると、ぽつりぽつりと下を向いて咲く小さな白い花を見つけることができます。
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つぼみは毬のようにぽってりと丸いかたち。
花は透明感をたたえた白い可憐な花びらと、中央に黄色い「しべ」が冠のように広がっています。
お茶はツバキ科の植物ですので、花は白ツバキに似ていますが、随分と小ぶりで、葉裏に隠れるように控えめに咲きます。
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香りもとてもほのかなもので、鼻を近づけるとほんのり石鹸のような香りがします。
お茶の花にはサポニンという成分が含まれていて、サポニンは泡立つ性質を持っています。
だから石鹸のような香りがするのでしょうか?

姿も香りも控えめで、奥ゆかしい純白の花。
なんとも日本的な美しさを持つ花です。

しかし、この可愛らしいお茶の花、実は生産家にとっては少々厄介なものなのです。
秋から冬にかけては、来年良い葉をつけるために木が栄養分をしっかりと蓄える大切な時期です。
ですから、花に栄養分を取られては困るのです。
悪天候が続くと花がたくさん咲く傾向にありますが、花がたくさん咲いていると、その茶樹は弱っているということなのです。

花が咲くということは、もちろん実ができ、種もできます。
これがお茶の実です。
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この実がはじけて、中から3つほど種が出てきます。
この時期、茶畑を歩いていると、地面に茶色い種が落ちています。
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種の寿命は短く、時間が経てば経つほど芽が出にくくなりますが、孫右ヱ門の茶畑では、種を集めて植えることはなく、そのまま放置しておきます。

茶の花は自家受粉をせず、花に寄ってくる蜂や様々な虫によって自然交配して実をつけます。
そうして自然交配によってできた種は、親樹の性質を受け継ぐことはほとんどなく、他の茶樹の性質が入り混じった雑種となります。
そんな種から出てきた芽は、かなり個体差があり、品質もバラバラになってしまいます。

昔、茶樹の繁殖には種をまいていたそうですが、現在では、健康な親樹の小枝をカットして育苗する「挿し木」による繁殖が一般的です。
挿し木ですから、親樹のDNAをそのまま引き継いだ茶樹が育ちます。
すべてが親樹のクローンですので、品質が一定に保たれるのです。

先日行った「口切りの儀」では茶農家らしく、茶の花を床に飾りました。
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花器は陶芸家、瀬津純司さんの作品です。

なかなか目にすることのないお茶の花ですが、近くに茶畑がある方は、ぜひ足をとめて、可憐なお茶の花を探してみてくださいね。