コラム孫右ヱ門

茶園の四季vol.1 お茶の花


2015年11月6日

今回は「茶園の四季」
秋の茶園の様子をご紹介します。

「お茶の花」をご存知ですか?
お茶の花と言っても、お茶席に飾る花のことではありません。
茶の樹に咲く花のことです。

茶園というと、青々とした葉っぱが広がる様子を思い浮かべますが、秋の茶園をよくよく見てみると、ぽつりぽつりと下を向いて咲く小さな白い花を見つけることができます。
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つぼみは毬のようにぽってりと丸いかたち。
花は透明感をたたえた白い可憐な花びらと、中央に黄色い「しべ」が冠のように広がっています。
お茶はツバキ科の植物ですので、花は白ツバキに似ていますが、随分と小ぶりで、葉裏に隠れるように控えめに咲きます。
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香りもとてもほのかなもので、鼻を近づけるとほんのり石鹸のような香りがします。
お茶の花にはサポニンという成分が含まれていて、サポニンは泡立つ性質を持っています。
だから石鹸のような香りがするのでしょうか?

姿も香りも控えめで、奥ゆかしい純白の花。
なんとも日本的な美しさを持つ花です。

しかし、この可愛らしいお茶の花、実は生産家にとっては少々厄介なものなのです。
秋から冬にかけては、来年良い葉をつけるために木が栄養分をしっかりと蓄える大切な時期です。
ですから、花に栄養分を取られては困るのです。
悪天候が続くと花がたくさん咲く傾向にありますが、花がたくさん咲いていると、その茶樹は弱っているということなのです。

花が咲くということは、もちろん実ができ、種もできます。
これがお茶の実です。
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この実がはじけて、中から3つほど種が出てきます。
この時期、茶畑を歩いていると、地面に茶色い種が落ちています。
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種の寿命は短く、時間が経てば経つほど芽が出にくくなりますが、孫右ヱ門の茶畑では、種を集めて植えることはなく、そのまま放置しておきます。

茶の花は自家受粉をせず、花に寄ってくる蜂や様々な虫によって自然交配して実をつけます。
そうして自然交配によってできた種は、親樹の性質を受け継ぐことはほとんどなく、他の茶樹の性質が入り混じった雑種となります。
そんな種から出てきた芽は、かなり個体差があり、品質もバラバラになってしまいます。

昔、茶樹の繁殖には種をまいていたそうですが、現在では、健康な親樹の小枝をカットして育苗する「挿し木」による繁殖が一般的です。
挿し木ですから、親樹のDNAをそのまま引き継いだ茶樹が育ちます。
すべてが親樹のクローンですので、品質が一定に保たれるのです。

先日行った「口切りの儀」では茶農家らしく、茶の花を床に飾りました。
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花器は陶芸家、瀬津純司さんの作品です。

なかなか目にすることのないお茶の花ですが、近くに茶畑がある方は、ぜひ足をとめて、可憐なお茶の花を探してみてくださいね。