コラム孫右ヱ門

歳時記vol.7 ヨシ刈り


2016年2月4日

今日は立春です。
まだまだ外は寒いですが、暦の上では春が始まる日。
立春は一年の始まりとされて、決まりごとや季節の節目の起算日になっています。

「夏も近づく八十八夜…♪」と茶摘みを歌った唱歌がありますね。

地域の気候によっても異なりますが、弊社の茶園では、立春の今日を初日として、およそ八十八日目、5月2日頃に茶摘みの始まりを迎えます。

そんな茶摘みまでの冬の間、茶農家は何をしているかというと、茶園に施肥をし、茶棚を組み直し、茶園を覆うための寒冷紗や葦簀(よしず)の補修をするのです。
よしずは自然素材なので、風雨に晒されるとどうしても傷んでしまいます。

弊社は宇治川で採れた葦(ヨシ)を仕入れて、冬の間に傷んだ箇所を補修しています。

今回、編集担当は、弊社の茶づくりに欠かせない葦簀(よしず)の原料である、宇治川のヨシ刈りを体験しに行ってきました。
ご協力いただいたのは、以前このコラムでも紹介させていただいた宇治川のヨシ原を管理されている山城萱葺株式会社様と城陽いきもの調査隊の方々です。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA今回ヨシ刈り体験をさせていただいたのは、宇治川河川敷にある約35ヘクタールほどのヨシ原です。
宇治川のヨシは太くて丈夫なため、葦簀(よしず)の原料に最適で、宇治茶の生産にも大変寄与してきました。
ヨシの大きいものでは、4m近くにもなります。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA昔はヨシを扱う業者も多く、ヨシ原ももっと広大だったのですが、外国産の安価なよしずに押され、また弊社のように葦簀(よしず)を用いた伝統的な茶づくりをする農家が大幅に減少したため、ヨシ原を管理するのは、現在山城萱葺株式会社様たった一件となってしまいました。
現在は、そのほとんどが重要文化財の萱葺屋根などの用途に使われています。

歴史的にもこのヨシ原は古く、石田三成が秀吉からこの地域の葦(ヨシ)と荻(オギ)の権利をもらい、莫大な利益を得て、軍資金に活用したという逸話も残っています。
現在は機械で刈られていますが、今回の体験では三成の時代に思いを馳せて、鎌を用いて手で刈りました。

4m近くにもなるヨシを手で刈っていくのは、なかなか大変な作業です。
子どもたちも一生懸命頑張っていましたが、宇治川のヨシは本当に太くて丈夫です。
子どもの力では一本ずつしか刈れません。
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OLYMPUS DIGITAL CAMERA刈ったヨシはひとまとめにして束ね、テントのように立て掛けていきます。
あちらこちらにこのようなヨシのテントが並んでいる光景は、宇治川の冬の風物詩です。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA葦簀(よしず)は「ほんず製法」には欠かせません。
寒冷紗(黒い化学繊維)もよしずも霜除けのため、また茶園を遮光して茶葉の甘味、旨味を高めるためという目的は同じですが、
寒冷紗に比べて、葦簀(よしず)と藁で覆った方がなぜか旨味も香味も深くなります。
そして、大霜の時でも、寒冷紗より葦簀で覆った茶園の方が霜にやられなかったという経験もあります。
それは、ヨシの中が空洞になっているためだと言われています。
ヨシは日本家屋のように、湿度が高いときには湿度を含み、湿度が無い時に湿度を吐き出す効果があるのです。
それが化学繊維の寒冷紗との大きな違いです。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA近年、国産のヨシの確保は大変難しくなってきています。
自生しているヨシを活用しようとする動きもありますが、やはり人の手により管理されていないヨシは太さや形がバラバラで、なかなか使い物にはなりません。
この宇治川の冬の光景が、いつまでも受け継がれていくことを願い、一生懸命ヨシを刈らせていただきました。

協力:山城萱葺株式会社、城陽いきもの調査隊